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中邑真輔WWE移籍の背景

      2016/01/20


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中邑真輔WWE移籍の背景

nakamura8

昨夜から新日本プロレスとCMLLの合同シリーズ「ファンタスティカマニア2016」が開幕した。

今月末での新日本プロレス退団が正式発表され、WWEとの契約が決定的となっている中邑真輔も、1月5日の後楽園ホール大会以来となる試合を行った。

今回中邑という新日本プロレスのトップスター選手がWWE移籍となった事については、新日本プロレス首脳陣を始め、関係者はその理由をしっかり考える必要があるだろう。

私は以前から当ブログで言っている通り、この話は中邑という一個人にフォーカスして見るのではなく、非常に大きな視点でその背景を見極める必要があると思っている。

大きな視点で周りを観察すると、こういった事が起こるのは時間の問題だと言う事が出来る。局所的に見ると、今回の一件は中邑がただ「新たな刺激を求めて」という理由でWWEへ旅立つという事にすぎないが、大局的に見ると周囲の状況がそうさせた、もしくは今回中邑がWWEに行かなかったとしても、将来的に別のスター選手が行っていただろうと言う事が出来る。

この記事では、一見関係無さそうに見えて、しかし大きく関わっているその背景について考察したい。

米国のテレビ業界

以前も当ブログで記事にしたが、ここで改めて米国のテレビ業界について話をしたい。ちょっと話が飛んでるように見えるかもしれないが、重要な話なので是非読み進めて欲しい。

米国と日本のテレビ業界というのは構造的に全く異なる。

日本では、テレビを見る形態はほとんど地上波オンリーだろう。NHK、フジテレビ、TBS、テレビ朝日、日本テレビの主要5社の番組を、キー局、地方局をネットして見るというのが一般的だ。

対して米国では同じ様にNBC、ABCなどの地上波放送がありつつも、ほとんどの世帯はケーブルテレビ局と契約して、ケーブルテレビの番組を視聴している。

日本でも最近はジュピターテレコム(J:COM)のケーブルテレビ局に加入して見ている人も多いかもしれない。しかし加入率では米国とは全く比にならない。

米国は地理学上、地上波の電波が届かない地域が多いこともあり、かなり昔からケーブルテレビを各家庭に引き込んでおり、その歴史は非常に長い。

米国ケーブルテレビの特徴

ケーブルテレビの特徴は、なんと言っても多チャンネルという点だ。

地上波の空を飛びかう電波とは違って、ケーブルから送られる放送データは、実に200を超えるチャンネル数をほこる。

日本でも空を超えて宇宙に行ってしまった衛星放送のスカイパーフェクトTVなどのCS放送と、BS放送によって多チャンネル時代が到来すると言われてきた(実態は全くそうなっていない)。

米国のケーブルテレビ局の最大手はコムキャストという会社で、ここは他の企業を圧倒する加入者数をほこり、近年ではケーブルテレビと一緒に“電話”、”インターネット”との抱き合わせ販売である”トリプルプレー”と呼ばれる販売方法を取り、電話とインターネットプロバイダーへも事業領域を拡大している。

このトリプルプレーは日本でも一時期盛り上がりを見せ、家の電話とインターネットとケーブルテレビの3点セットの割引販売を各社がこぞって打ち出していた。日本でそのトリプルプレーに一番力を入れていたのがauのKDDIだ。KDDIは前述の日本最大手のケーブルテレビ会社ジュピターテレコム(J:COM)を買収し、グループ傘下に入れた。

このように、米国ではケーブルテレビ局が多くの世帯をカバーしており、多チャンネルであるのが大きな特徴である。

米国ケーブルテレビの問題点

そんな米国のケーブルテレビだが、大きな問題を抱えている。

それは“料金が高すぎる”という点だ。

料金が高くなる理由は、前述した”多チャンネル”なのが要因の一つなのだが、ケーブルテレビは最低でも”ベーシックチャンネル”として、見たくもないチャンネルが勝手に付いてくる。契約形態として、全く見ない多チャンネル+本当に見たいチャンネルを追加で契約し、それにインターネットと電話も合わせると、月々2-4万円のお金をケーブルテレビ局に支払う必要があるのだ。

現在日本の安倍総理が「日本の携帯電話料金が高い‼️」と問題視しているが、その日本の電話料金もビックリの料金を米国の各家庭は支払わされているのだ。

そのベーシックの多チャンネルを強制的に払わされている理由は、コムキャストの市場独占状態が関係している。独占禁止法に抵触しそうな状況において、顧客は選択肢がないために高い料金体系を飲まざるを得ないのだ。

スポーツ界の放映権料の高騰

ここで少し話は脱線するが、何度か当ブログでも触れてきた世界のスポーツ界での放映権料の高騰について少し触れたい。

現在マー君に百億円ものお金を支払っている野球のメジャーリーグや、米国のメジャースポーツのバスケットボールのNBA、そして米国No.1人気スポーツのアメフトのNFLは、その放映権料が右肩上がりに高騰し、一種のバブルと化している。

その背景には「テレビのハードディスクによる録画機能の向上」がある。昔はVHSのビデオテープでのテレビ番組の録画が一般的だったが、それがDVDになり、ブルーレイになり、今では大容量のハードディスクに置き換わっている。ここでのポイントは”非常に大容量”である点で、人々のテレビ番組を見る形態が大量の番組を録画して、それを後で見るという観方に変わってきたところである。

それにより、人々は番組の間のコマーシャルを早送りし、それによってテレビCMのコマーシャルの費用対効果が大きく疑われる事となったのだ。

そこで注目されたのが”スポーツ中継”だ。当ブログでも以前述べたが、スポーツ中継は“生で見るもの”というのがある。平均4時間以上の野球の試合を、録画して後で見ようという人は相当マニアックな人だ。普通は生で見ようと思うはず。それによってメジャーなスポーツ中継には多くのスポンサーマネーが集まっていったのである。

現在米国最大手のスポーツ専門局「ESPN」は、MLB、NBA、NFLなどの主要なメジャースポーツを一手に放送しているが、そのESPNが各リーグに支払う放映権料の総額は、なんと年間60億ドル以上(日本円で約7,200億円)に上る。それでもESPNは現時点で年間100億8000万ドル(日本円で約1兆2096億円)の売上げがあり、それだけ支払える体力がある。

これがマー君こと田中将大投手がヤンキースと7年で総額1億5500万ドル(約161億円)の契約を結んだ背景である。

既存ケーブルテレビビジネスの崩壊の兆し

このような殿様商売で年間1兆円以上の売上げを謳歌しているケーブルテレビ局だが、それも崩壊の兆しが見えてきている。

そのケーブルテレビビジネスを破壊するものこそ「インターネット動画配信サービス」である。

米国の人々はテレビを見るのに月々総額2-4万円ものお金をケーブルテレビ会社に支払っている。しかしそれはアカンやろとばかりに、新しいビジネスモデルを消費者に提示しているのがインターネット動画配信サービスなのだ。

その代表格がNetflix(ネットフリックス)。

急成長を続けるインターネット動画配信サービス最大手のネットフリックスは、月に10ドルほどで動画見放題のサービスで、有料加入者はなんと現在6,500万人に上る。

ろ、6,500万人!!!

新日本プロレスワールドで3万人位なので、めちゃくちゃ化け物のような加入者数である。

このネットフリックスが加入者を増やした要因の一つとして、現状の高すぎるケーブルテレビ局の料金体系が挙げられる。近年米国ではケーブルテレビを解約し、ネットフリックスに移るという民族大移動が起こっているのだ。

事実、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの調査によると、前述のスポーツ専門局ESPNは2011年以降720万の加入者を失い、契約数は約9200万世帯になったという。最新の数字では9150万世帯でこの半年でさらに50万世帯を失うという急速な落ち込みを示している。ネットフリックスと加入者数が逆転するのも時間の問題だろう。

ちなみにインターネット動画配信サービスを分類すると、「総合サービス」と「専門サービス」に分けることが出来る。

スポーツ、映画、ドラマ、アニメなどの「総合サービス」としては、前述のネットフリックスや、同じく勢力を伸ばしているHulu、そしてインターネット物販最大手のAmazonのAmazonプライムの3つが大きい。

「専門サービス」としては、何と言ってもWWEのインターネット動画配信サービスの「WWEネットワーク」だ。現在の加入者数は140万人程となっている。他にも総合格闘技最大手のUFCの「UFCファイトパス」などがある。

インターネット動画配信サービスが伸びた背景

インターネット動画配信サービスがここまで伸びた背景としては、前述の「ケーブルテレビの料金高過ぎ」問題と、他にも「インターネットが高速となったブロードバンド化」「インターネットとテレビを接続するプラットフォームが整備された」の2つが挙げられる。

現在既にインターネットの帯域は、インターネット経由で動画を配信してテレビで見るにも十分な程に大容量化しており、ブロードバンド化がこのような動画サービスを後押ししたのは間違い無い。

合わせて、PS4、XBOXone、Wii、アップルTV、クロームキャストなど、こういった動画配信サービスが「マルチプラットフォームに対応した」のも大きな要因の一つだろう。ちなみに新日本プロレスワールドも先日Googleのクロームキャストに対応した。

インターネット動画配信サービスの世界進出

ネットフリックスのようなインターネット動画配信サービスは、今後も既存のケーブルテレビ局と激戦を繰り広げるのは間違いない。これによって今後さらにケーブルテレビの解約が増えていくだろうし、ケーブルテレビ局側の料金体系の見直しが進みそうだ。

一方でこれは日本にとっても対岸の火事ではない。なぜならばケーブルテレビと違って、インターネット動画配信サービスは「インターネット」というインフラの特性上、簡単に日本に上陸出来るからだ。

既に昨年の秋からネットフリックスが日本でもサービス提供を開始した。そしてそれ以前からHuluは日本でサービス提供を始めており、Amazonプライムも日本でのサービス提供が開始された。

このように、ネットフリックス、Hulu、Amazonプライムといったインターネット動画配信サービスの巨人達は、自国の米国ケーブルテレビ局のビジネスモデルを破壊するだけでなく、インターネットによって容易にグローバル展開が可能となったのである。

これと同じ事が言えるのがWWEの「WWEネットワーク」だ。WWEネットワークはなんと新日本プロレスの年間最大の大会1.4東京ドームの翌日の1月5日から日本でのサービス提供を開始している。そしてなんと同日の1月5日の朝から米国のプロレス業界紙レスリングオブザーバー等から「中邑真輔、AJスタイルズ、カール・アンダーソン、ドク・ギャローズの4人がWWE移籍」という報道が一斉に出された。これはあまりにもタイミングが良過ぎる話である。

WWEネットワークという自社のインターネット動画配信サービスのグローバル展開は、今のWWEの最重要課題だ。

よって今回の一件は中邑個人の問題ではなく、上段で述べたこれらの背景が大きく関わっていると言えるのだ。

日本は今後どうなるか

前述の通り、米国発のインターネット動画配信サービスは、米国のケーブルテレビ局だけでなく世界中の既存ビジネスに影響を与えるのは間違いない。

事実日本を見れば、ネットフリックスはフジテレビと、Huluは日本テレビと提携し、番組製作やグローバル展開において協力していくと発表された。

それだけだはない。ネットフリックスは携帯電話キャリアのソフトバンクと提携を結び、同じくHuluも携帯電話各社と提携を結んだ。この意味する事は、ネットフリックスと携帯電話サービスのセット割が行われる事であり、もう既にドコモの携帯電話を契約すると、強制的にHuluに申し込む必要があり初月無料で翌月以降は自分で解約する必要がある。そしてソフトバンクの携帯電話と契約すると、同じくネットフリックスに強制的に加入する必要がある。これによって、Huluやネットフリックスは既に日本で何百万人もの加入者を獲得しているのだ。

完全にビジネスとして上手い。上手いようにやられ過ぎていると言える。

同じようにWWEも、WWEネットワークの日本加入者拡大のために信じられないような手を次々と打ってくるはずだ。その手始めが中邑真輔のWWE移籍というわけだ。

その後のシナリオも色々想像する事が出来る。WWEが日本の様々な企業と提携し、テレビ局やゲーム、ファッション業界にいたるまで「WWEネットワーク最高」、「WWE格好良い!」、「俺も今からWWEユニバースになる」というイメージ戦略をガンガン仕掛けてくる可能性も十分ある。

グローバルなレベルのビジネスにおいて、こういった国際企業と日本企業のやり取りは日常茶飯事なのだ。

最後に

もうずっとこういった状況が日本では続いているが、今後更にプロレスだけでなく全ての業種について企業はグローバルでの戦いを強いられるだろう。

それはプロレスとは全く関係無いとも見える現在の日本と各国とのTPP交渉を見ても明らかだ。

テレビ業界を始め、総務省などの各省庁からの規制の枠組みは、今後一層緩和する「規制緩和」の方向に進んでおり、その流れが止まる気配は全く無い。

規制緩和、関税撤廃といったキーワードは、今後も日本の全ての業界が無視出来ないものになるはずだ。

「改革!改革!」とかつて叫んでいた日本の首相の言う通り、これは事実上不可避な流れである。

それはプロレスといえども対象外ではなく、グローバル競争の枠組みは今後一層拡大していくのは明らかなのである。

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