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エヌヒトコラム:WWEの新時代と新日本プロレス

   


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エヌヒトコラム:WWEの新時代と新日本プロレス

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最近WWEは度々「我々はThe New Era(新時代)に突入する」というキーワードを連呼している。WWEは新時代に突入するという。その新時代とは何なのか。それはWWE自身明確にこれまで説明はしてこなかった。しかしながら、現在のWWEとこれまでのWWEは明らかに違っており、大きな変化が起こっているのは間違い無い。

WWE新時代とは何か。本記事では様々な事実を交えて、この新時代を解説したい。

「WWE新時代なんて興味無いよ・・」という方も多いだろう。しかし日本のプロレスを含むこの業界の様々な出来事が、そしてこれから起こるであろう多くの出来事が、この「WWE新時代」という大きな流れとは無関係にいられないと思っている。そのため是非ご一読頂けると幸いである。

はじめに

WWEは昨年度の決算で過去最高の売上高を記録した。数字だけを見れば絶好調!WWEに敵は無しを表しているが、私には今WWEが大きな危機感を抱えているように思える。

大きな危機感とは何か。それは「スター不在」である。

ファンからすれば「WWEのどこかスター不在なんだ!」と思うかもしれない。しかし今のWWEに全米レベルで認知度があるスターはどれ程いるだろうか。正直ジョン・シナだけだと私は感じている。そのシナも現在39歳であり、今やベテランの域に達している。

シナの下はどうだろう。ダニエル・ブライアンは引退してしまったし、CMパンクはUFCに移籍した。そしてブロック・レスナーは限定出場であるし、ランディー・オートンももはやフル出場ではない。

レッスルマニアを見ればわかる通り、あのWWEでさえビッグマッチではレスナーやロック、アンダーテイカーやスティングなど過去のビッグネームに頼っている現状があるのだ。

会場ではブーイングと歓声の半々のシナだが、シナが抜ければグッズ等のマーチャンダイズ収入でWWEに大打撃を与えるのは間違いない。

「ではスターを作れば良いじゃないか。あんなに世界的な企業だから出来るはず。」と思うかもしれない。しかし米国のファンも馬鹿では無い。日本でも実力に合わない選手のプッシュがあればファンが大反発するのは皆ご存じだと思うが、米国も全く例外では無い。

わかり易いのはローマン・レインズだ。若きスター候補だが、WWEのファンは団体が彼を猛プッシュする事に大きく反発した。レッスルマニアのメインに出ようが、WWE世界ヘビー級王者になろうが、ファンは彼に大ブーイングを浴びせたのだ。そしてそれは今も続いている。

このように団体の有力選手は多いものの、全米レベルのスター不在に危機感を感じているのが、今のWWEなのだ。

WWEの選手獲得、育成方針に大きな変化

「選手の獲得」と「選手の育成」。私が近年一番WWE変わったと思うのはこの点だ。これまでの世界のプロレスの歴史は「ビンス・マクマホン(Jr)以前と、ビンス・マクマホン以降で分けれらる」と言える。それはビンスがお父さんのビンス・マクマホン・シニアから、買収による団体経営の掌握以降の歴史を見れば明らかである。ビンスの出現によってプロレス界のビジネスモデルが大きく変わったのだ。

そのビンスのこれまでの方針を見ると、「これまであり得なかった事」が近年多く起きている。それこそ「新時代」を思わせる。

何が一番変わったか。それは一言で言うと「WWEが、自分達を他のプロレス団体と同じと見なすようになった」という事。これはどういう事かというと、これまでのWWEは「他団体とは明確に違う。何だったらプロレス団体ではない。」という事を明確に打ち出していたのである。

ビンスが他団体の選手をWWEでそのままの状態で使うのというは非常に稀である。知名度のある選手は特に。ビンスはWWEと並び立つ存在を認めておらず、ファンにそう思われる事を極端に嫌う。よって外部から選手を獲得しても、「リングネームを変える、キャラクターを変える」といったWWEの色を付けて再度売り出す、それがWWE流、ビンス流の大原則であった。

よって、WWEは基本外部から知名度のある選手を獲得しない(テリトリー破壊の全米進行時は除く)。WWEは自分の団体で選手を育て、たとえ他団体から選手を取ったとしても、一からキャラクターを設定して自社で育成する方針だったのだ。

ちなみにその全く逆の方針が、かつてWWEを倒産寸前まで追い込んだライバル団体WCWだろう。WCWはテレビ王テッド・ターナーの資金力を背景に、WWEのスター選手の大量引き抜きを行った。WCWの狙いは「WWEのスターをそのまま連れてくる」であり、キャラクターもそのままであった。WCWはWWEのスター選手をそのまま自分の団体の番組に登場させ、番組名もWWEの「マンデー・ナイト・ロー」と酷似した「マンデーナイトロ」という番組名にした。嘘みたいな本当の話だが、WCWは同じような番組名で、同じスター選手を出せば、ファンはそのままスライドして見てくれると思ったのだ。

この辺のWWEとWCWのテレビ戦争については、以前当ブログで詳しくまとめたので興味のある方は是非。

WWE vs WCWの月曜テレビ戦争(マンデーナイトウォーズ)とは

WWEは上記の時期から、明確に他団体との違いを打ち出すようになってきた。特に徹底したのは「用語」だ。彼らは自分たちを「プロレス」ではなく「スポーツエンターテイメント」の会社と定義し、「プロレスファン」の事を「WWEユニバース」と呼ぶようになった。そして「プロレスラー」の事を「WWEスーパースター」と呼び、「女子プロレスラー」を「ディーヴァ」と呼んだ。これはレスラー、実況、メディアなどに徹底させた。

このようにビンスはずっと他団体との違いに極めて強いこだわりを持ち、他団体の選手を取るという事はしてこなかった。少なくとも、他団体でそれなりに知名度がある選手を、そのままの状態で自分の団体に出すというのは考えにくかったのである。

それが近年はどうだろう。TNAのスターとして知名度があったAJスタイルズが名前・キャラをそのままの状態でデビューさせPPVのメインでWWE世界ヘビー級王座に挑戦させたと思えば、バレットクラブも「ニュージャパンから来たザ・クラブ」という表現を使っている。更にNXTにいる中邑真輔も、リングネームもそのままに「キング・オブ・ストロング・スタイル」という新日本プロレスの代名詞とも言える異名をそのまま使い、商標登録までしてしまった。これだとWCWと同じだ。

かつてWWEの番組で「TNA」というキーワードや「(TNA代表の)ディクシー・カーター」なんて名前を聞くことは、まずあり得なかったし、2011年にCMパンクがRAW生放送中に「ニュージャパン・プロレスリング」という名前を出した時も「大事件だ!」と騒ぎになった程である。

それが今は「オカダ」「タナハシ」「IWGP」などという言葉が頻繁にWWEの番組で聞くことが出来る。

一体これは何なのか??

これこそが「新しい人材育成」であり、「新時代」だと思うのだ。

WWEの新時代とは

WWEが言う新時代。それは一言で言えば「未来永劫、持続的に成長する企業になる事」だと私は解釈している。

そのために必要なのがオバマ大統領ばりの「Change!」なのである。

この「未来永劫、持続的に成長する企業になる事」という「WWEの新時代」には、色々なプランがあると思っている。それは現在進行形で行っているブランド分割のそうだろう。それこそ3本の矢、4本柱、もしかすると100のプランがあるのかもしれない。

今回私はその中で、最も顕著な変化である「新しい育成システム」についてここで取り上げたい。

WWEが大きく抱えている危機感が「スター不在」であり、そのための「新しい育成システム」。それが現在のWWE新時代のコア戦略の一つであるのは間違い無い。

以下でその詳細について解説したい。

WWEの新しい育成システム

WWEの育成システムを語る上で外せないのがUFCの存在だ。プロレス界では敵なしのWWEだが、企業規模で並び立つのが世界最大の総合格闘技団体UFCである。

WWEとUFCはお互いを意識するライバル関係にある。WWEは特にUFCの成功モデルに強く影響を受けている。顕著なのが「女子の強化」と「育成システムの整備」の2つだ。

WWEはUFCで一大ブレークした女子ファイター”ロンダ・ラウジー”に強く影響を受け、近年盛んに「ディーヴァ(女子)革命」というキーワードを使っている。日本からも華名がWWEと契約し、NXT女子王者となっている。

もう一つの「育成システム」については、UFCは「TUF(タフ)-The Ultimate Fighting」という育成番組が大成功している。日本でも昨年「Road to UFC JAPAN」という番組名でテレビ東京で放送されたが、「有望な若手選手を、スターUFCファイターが育成するリアリティー番組」が全世界で受けている。これによって「若手発掘」も出来るし、若手時代から見守るファンによって「UFC自体の人気底上げ」にも繋がった。

これに影響を受けてWWEは、久々に選手育成番組「タフ・イナフ」を復活させた。「タフ」と「タフ・イナフ」で名前も似ているが、始まったのはWWEの方が先で、これまで長らく休止状態だった。

しかしこの復活「タフ・イナフ」は結果的に失敗に終わった。

視聴率もさることながら、WWEは今回再認識したはずだ。「レスラー育成は時間が掛かる」と。このタフ・イナフには他団体で活躍する有望な若手などいなかった。何だったらプロレス素人ばかりで、受け身やスクワットも怪しい選手達だったのである。

私はよく「WWEは成功の数だけ失敗をしている」と言っているが、この時もWWEの撤収っぷりは早かった。ダメだと思う時の判断と行動は非常に早い。

これで「レスラー育成は時間が掛かる」と再認識したWWEは、新しい方向へ舵を切った。

それが「他団体の有望な選手を掻き集める」である。

具体的には「NXTの強化」と、今度始まる「WWEクルーザー級クラシック」である。

世界レベルのピラミッド型育成システムを整備

NXTは元々「育成用のファーム」として立ち上げられた団体・番組で、近年は「試合重視」の内容と「第3のブランド」という位置づけで人気を集めている。

そのNXT人気を牽引したのが元新日本プロレスのプリンス・デヴィットことフィン・バロールや、サミ・ゼインら米国インディーで活躍した選手達だった。現在NXTはトリプルH COOと、ウィリアム・リーガルGMの陣頭指揮の元、拡大を続けている。

そしてもう一つが「WWEクルーザー級クラシック」。日本から飯伏幸太、ドラゴンゲートの戸澤陽、W-1のTAJIRIが参戦、メキシコCMLLから新日本にレンタルで来ていたマスカラ・ドラダ、そして元ノアのザック・セイバー・Jrらが参戦する。

この「WWEクルーザー級クラシック」はNXTともまた別である。ここで活躍した選手が、WWEと所属契約を結ぶという流れになる。よって活躍が認められれば、NXTや一軍に昇格するというわけだ。

これによって、WWEは世界レベルのピラミッド型育成システムを構築したと言える。

整理すると以下の通り。

一軍:RAW、スマックダウン
二軍:NXT
三軍:WWEクルーザー級クラシック
四軍:WWEクルーザー級クラシック予選

2軍以上がWWEの所属契約選手と見てよいだろう。上の四軍で書いた通り、WWEクルーザー級クラシックは米国、英国で予選が行われており、今後それは更に拡大される可能性が高い。

このサッカーのような多重構造の世界規模の育成システムこそが、WWEの「スター不在」を解決するキーとなっているのは間違いない。そしてこれまでの「WWEは他団体とは違う」方針から脱却し、全世界を「地続き」にしたピラミッドを建築することで、「確率統計的にスターが出る可能性が高い」状態にしようとしているのである。

なおかつもう一つ重要なのは、このピラミッドにUFC的な「ファンが育てる」という仕組みを入れて、WWEネットワークで全世界へ配信する事で、それ自体も会社の有力なコンテンツにしてしまおうという計画なのである。

これこそ「新時代」であり、「WWEが持続可能な成長をする企業」にするための壮大なプロジェクトなのである。

最後に

先日の新日本プロレス大阪城ホール大会後、木谷高明オーナーは「新日本プロレスはこのままだとWWEの二軍になる」と盛んに警戒感を露わにした。それは間違いなく上述の「WWE新時代」を意識したものである。

これまでWWEと新日本プロレスは違うものだったが、「お互いが寄って来ている」ことによって「WWEと新日本が地続きになる」危険性が高いのだ。

事業規模からしてWWEは新日本の何十倍である。そして事実、近年中邑真輔やAJスタイルズ、プリンス・デヴィットといったスター選手らが新日本プロレスからWWEへ移籍し、新日本プロレスとDDTのダブル所属だった飯伏幸太もWWEクルーザー級クラシックに参戦する。

このWWEの育成ピラミッドは全世界に適応されるため、新日本も例外では無い。これでWWEクルーザー級クラシックも上手くいって、このピラミッドが更に強化されれば、木谷オーナーが言う通り「新日本プロレスはWWEの2軍になる」のは到底避けれないだろう。

これは間違いなく「大きな流れ」である。この流れにあがなうのか、それとも甘んじて飲み込まれてしまうのか。

それを選択するのはWWE以外の皆である。

世界のプロレスは、このWWEの新時代によって今後大きく変わろうとしている。

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